藤女子大学における研究活動上の不正行為に関する規程

(目的)

第1条
この規程は、藤女子大学(以下「本学」という。)における研究活動上の不正行為の防止及び不正行為が生じた場合の適切な措置等に関し必要な事項を定めることを目的とする。

(定義)

第2条
この規程において、「研究者」とは、本学の教員、本学で研究活動に従事する学部・大学院生並びに本学で研究活動を行う交換教員などをいう。

2 この規程において、「不正行為」とは、研究者又は研究者であった者が本学在籍中に行った次の各号に掲げる行為をいう。ただし、故意によるものではないことが根拠をもって明らかにされたものは、不正行為には当たらないものとする。

  • ねつ造 存在しないデータ、研究結果等を作成する行為
  • 改ざん 研究資料、機器、過程を変更する操作を行い、データ、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工する行為
  • 盗用 他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又は用語を当該研究者の了解又は適切な表示なく流用する行為
  • 二重投稿 同一内容とみなされる研究論文を複数作成して異なる雑誌等に発表する行為
  • 不適切なオーサーシップ 研究論文の著者リストにおいて、著者としての資格を有しない者を著者として含め、又は著者としての資格を有する者を除外する行為
  • 人権等の侵害 研究活動に関わる者の人権、プライバシーその他の権利利益を侵害する行為
  • 研究費の不正使用 法令、研究費を配分した機関(以下「資金配分機関」という。)が定める規定及び本学の規程等に反して研究費を使用する行為
  • 前各号に掲げる行為の証拠隠滅又は立証妨害

(運営及び管理体制)

第3条
本学における研究費の適正な運営・管理及び研究活動上の不正行為を防止するために、最高管理責任者、統括管理責任者、コンプライアンス推進責任者及び研究倫理教育責任者を置く。

(最高管理責任者)

第4条
最高管理責任者は、大学全体を統括し、研究活動上の不正行為の防止及び研究費の運営・管理について最終責任を負うものとし、学長をもって充てる。

2 最高管理責任者は、統括管理責任者、コンプライアンス推進責任者及び研究倫理教育責任者が責任を持って研究活動の運営・管理が行えるよう、適切にリーダーシップを発揮して不正行為の防止等に努めなければならない。

3 最高管理責任者は、研究費の事務処理手続きに関する責任と権限を明確にし、それに応じた体制を構築しなければならない。

(統括管理責任者)

第5条
統括管理責任者は、最高管理責任者を補佐し、本学における研究活動上の不正行為の防止及び研究費の運営・管理について大学全体を統括する実質的な責任と権限を有するものとし、最高管理責任者が指名する副学長をもって充てる。

2 統括管理責任者は、不正防止対策の組織横断的な体制を統括する責任者として、大学全体の具体的な対策を策定・実施し、実施状況を確認するとともに、実施状況を最高管理責任者に報告しなければならない。

(コンプライアンス推進責任者)

第6条
コンプライアンス推進責任者は、大学内の各部局における研究活動上の不正行為の防止及び研究費の運営・管理について実質的な責任と権限を有するものとし、各学部長、大学院研究科長及び事務局長をもって充てる。

2 コンプライアンス推進責任者は、必要に応じてコンプライアンス推進副責任者(以下「副責任者」という。)を任命することができるものとし、各学科主任をもって充てる。

3 コンプライアンス推進責任者及び副責任者は、統括管理責任者の指示の下、次の各号に掲げる業務を行う。

  • 自己の管理監督する部局における対策を実施し、実施状況を確認するとともに、実施状況を統括管理責任者に報告すること。
  • 不正防止を図るため、部局内の研究費の運営・管理に関わる全ての構成員に対し、コンプライアンス教育を実施し、受講状況を管理監督すること。
  • 自己の管理監督する部局において、構成員が、適切に研究費の管理・執行を行っているか等をモニタリングし、必要に応じて改善を指導すること。

(研究倫理教育責任者)

第7条
研究倫理教育責任者は、本学に所属する研究者へ研究倫理に関する知識を定着・更新させるための実質的な責任と権限を有するものとし、最高管理責任者が指名する副学長をもって充てる。

(研究者及び事務職員等の意識向上)

第8条
最高管理責任者は、次の各号に掲げる事項により、研究者及び事務職員等の不正行為の防止に対する意識の向上に努めなければならない。

  • 本学の研究倫理に関する基本方針の策定
  • 研究者及び事務職員等に対するコンプライアンス教育及び研究倫理教育

(研究者及び事務職員等の責務)

第9条
研究者及び事務職員等は、法令、資金配分機関が定める規定及び本学の規程等を遵守し、研究及び職務に係る倫理の保持に努めなければならない。

2 研究者は、法令及び資金配分機関が定める規定等に基づき一定期間研究データを保存し、必要に応じて開示しなければならない。

3 研究費の管理・運営に係る研究者及び事務職員等は、コンプライアンス教育及び研究倫理教育を積極的に受講するとともに、研究活動上の不正行為を行わない旨の誓約書に署名しなければならない。

(不正防止計画)

第10条
最高管理責任者は、不正防止対策の基本方針を策定・周知するとともに、それらを実施するために必要な措置を講じなければならない。

2 最高管理責任者は、大学全体の観点から不正防止計画を推進し、具体的な対策を策定・実施するため、防止計画推進部署を置き、財務課をもって充てる。

3 最高管理責任者は、率先して不正防止に対応することを表明するとともに、自ら不正防止計画の進捗管理に努めるものとする。

(内部監査)

第11条
最高管理責任者は、本学における研究費(競争的研究資金等)の適正な運営・管理を図るため、内部監査部門を置き、総務課をもって充てる。

2 内部監査部門は、会計書類の形式的要件等の財務情報をもとに執行状況及び体制不備等の検証を行うものとする。

3 内部監査部門は、不正が発生するリスクに対して、重点的にサンプルを抽出し、抜き打ちなども含めたリスクアプローチ監査を実施することができる。

(相談窓口)

第12条
最高管理責任者は、研究費の使用に関するルールや事務手続き等について、大学内外からの相談を受け付ける窓口(以下「相談窓口」という。)を置き、財務課をもって充てる。

(通報窓口)

第13条
最高管理責任者は、研究活動上の不正行為に関する告発及び告発の意思を明示しない相談(以下「通報」という。)を受け付ける窓口(以下「通報窓口」という。)を置き、総務課をもって充てる。

(通報の受付)

第14条
通報窓口は、書面、電話、ファクシミリ、電子メール、面談等の方法により、直接通報を受け付けるものとする。

2 通報は、原則として顕名により、次の各号に掲げる事項が全て示されているもののみを受け付けるものとする。

  • 不正行為を行ったとする者・グループ
  • 不正行為の態様・事案の内容
  • 不正とする合理性のある理由


3 前項の規定にかかわらず、匿名による通報があった場合は、通報の内容に応じ、顕名の通報があった場合に準じた取扱いをすることができる。

4 学協会等の科学コミュニティや報道により不正行為の疑いが指摘された場合は、匿名による通報に準じて取扱うものとする。

5 不正行為の疑いがインターネット上に掲載されている(不正行為を行ったとする者・グループ、不正行為の態様・事案の内容が明示され、かつ不正とする合理性のある理由が示されている場合に限る。)ことを本学が確認した場合は、匿名による通報に準じて取扱うものとする。

6 通報窓口の担当者及び当該通報事案に携わる者(以下「調査関係者」という。)は、自己との利害関係を持つ事案に関与してはならない。

(通報の取扱い)

第15条
通報窓口は、前条に規定された通報があった場合は、直ちに最高管理責任者に報告しなければならない。

2 最高管理責任者は、通報が、本学が調査を行うべき内容でない場合は、該当する研究機関等に当該通報を回付するものとする。通報の内容が、他にも調査を行う研究機関等が想定される場合は、該当する機関に当該通報について通知しなければならない。

3 他の研究機関等から回付された通報は、本学に直接通報があったものとして取扱う。

4 書面による通報など、通報窓口が受け付けた否かを通報者が知り得ない方法による通報がなされた場合、通報窓口は通報者(匿名の通報者を除く。ただし、調査結果が出る前に通報者の氏名が判明した後は顕名による通報者として取扱う。)に、通報を受け付けたことを通知しなければならない。

5 告発の意思を明示しない相談については、最高管理責任者はその内容に応じ、告発に準じてその内容を確認・精査し、相当の理由があると認めた場合は、相談者に対して告発の意思があるか否か確認するものとする。これに対して告発の意思表示がなされない場合でも、最高管理責任者は、当該事案の調査を開始することができる。

6 不正行為が行われようとしている、又は不正行為を求められているという通報があった場合、最高管理責任者はその内容を確認・精査し、相当の理由があると認めたときは被通報者に警告を行うものとする。ただし、被通報者のうち本学に所属する研究者及び事務職員等でない者については、当該被通報者が所属する研究機関等に事案を回付することができる。また、当該被通報者に警告を行った場合は、その所属する研究機関等に警告の内容等を通知するものとする。

(通報者及び被通報者の保護)

第16条
通報を受け付ける場合は、通報窓口の担当者以外は見聞できないように、通報内容や通報者の秘密を守るための適切な措置を講じなければならない。

2 通報窓口の担当者及び調査関係者は、通報者、被通報者、通報内容及び調査内容について、調査結果の公表まで、通報者及び被通報者の意に反して調査関係者以外に漏洩しないよう秘密保持を徹底しなければならない。

3 調査内容等が漏洩した場合は、最高管理責任者は、通報者及び被通報者の了解を得て、調査中にかかわらず調査事案について公に説明することができる。ただし、通報者又は被通報者の責により漏洩した場合は、漏洩した当人の了解は不要とする。

4 最高管理責任者は、悪意(被通報者を陥れるため、又は被通報者が行う研究を妨害するためなど、専ら被通報者に何らかの損害を与えることや被通報者が所属する機関・組織等に不利益を与えることを目的とする意思。以下同じ。)に基づく通報であったことが判明した場合は、通報者の氏名の公表、通報者が本学の構成員である場合は「藤女子大学就業規則」に定める懲戒(以下「懲戒処分」という。)及び刑事告発等、必要な措置を講ずるものとする。

5 最高管理責任者は、悪意に基づく通報であることが判明しない限り、単に通報したことを理由に、通報者に対し、解雇、降格、減給その他不利益な取扱いをしてはならない。

6 最高管理責任者は、相当な理由なしに、単に通報がなされたことのみをもって、被通報者の研究活動を部分的又は全面的に禁止したり、解雇、降格、減給その他不利益な取扱いをしてはならない。

(職権による調査)

第17条
最高管理責任者は、通報の有無にかかわらず、相当の信頼性のある情報に基づき不正行為があると疑われる場合は、当該事案の調査を開始することができる。

(調査機関等)

第18条
本学に所属する(どの研究機関にも所属していないが専ら本学の施設・設備を使用して研究する場合を含む。以下同じ。)研究者に係る不正行為の通報があった場合は、原則として本学が通報された事案の調査を行う。

2 被通報者が複数の研究機関に所属する場合は、原則として被通報者が通報された事案に係る研究活動を主に行っていた研究機関を中心に、被通報者が所属する複数の研究機関が合同で調査を行うものとする。ただし、中心となる研究機関や調査に参加する研究機関については、関係機関間において、事案の内容等を考慮して別の定めをすることができる。

3 現に本学に所属する被通報者が、他の研究機関で行った研究活動に係る通報があった場合は、本学と当該研究活動が行われた研究機関とが合同で、通報された事案の調査を行う。

4 被通報者が本学を既に離職している場合は、本学と現に所属する研究機関とが合同で、通報された事案の調査を行う。ただし、被通報者が本学を離職後、どの研究機関にも所属していないときは、本学が通報された事案の調査を行うものとする。

5 前4項によって、本学が通報された事案の調査を行うこととなった場合は、被通報者が現に本学に所属しているかどうかにかかわらず、誠実に調査を行わなければならない。

6 被通報者が、調査開始のとき及び通報された事案に係る研究活動を行っていたときの双方の時点でいかなる研究機関にも所属していなかった場合や、調査を行うべき研究機関による調査の実施が極めて困難であると、通報された事案に係る資金配分機関が特に認めた場合において、当該資金配分機関から調査協力を求められたときは、本学は誠実に協力するものとする。

7 本学は、他の研究機関、当該資金配分機関又は当該研究活動の分野に関連する学協会等の科学コミュニティに調査を委託すること、又は調査を実施する上での協力を求めることができる。

(調査委員会)

第19条
第15条に規定する報告に基づき、最高管理責任者は、速やかに調査委員会を設置しなければならない。

2 調査委員会は、次の各号に掲げる調査委員をもって組織する。

  • 統括管理責任者(委員長)
  • 被通報者が所属する学部の学部長又は大学院の研究科長
  • 最高管理責任者が指名する教員若干名
  • 第21条に規定する本格的な調査(以下、「本調査」という。)を行う場合は、本学と利害関係を有しない弁護士、弁理士、公認会計士等の有識者又は通報された事案に関連する研究分野の研究者であって本学に属さない者(以下、「外部有識者」という。)
  • その他最高管理責任者が特に必要と認めた者


3 本調査における調査委員会は、調査委員の半数以上が外部有識者で構成され、全ての調査委員は、通報者及び被通報者と直接の利害関係を有しない者でなければならない。

4 最高管理責任者は、調査する事案に応じて調査委員の調査権限を定め、関係者に周知するものとする。

(予備調査)

第20条
調査委員会は、通報された行為が行われた可能性、通報の際に示された科学的な合理性のある理由の論理性、通報内容の合理性及び調査可能性等についての予備調査を行い、本調査を行うか否か決定して、通報を受理した日から30日以内に、その結果を最高管理責任者及び通報された事案に係る資金配分機関に報告しなければならない。

2 通報がなされる前に取り下げられた論文等に対する通報に係る予備調査を行う場合は、取り下げに至った経緯・事情を含め、本調査すべきものか否か判断するものとする。

3 本調査を行わないことを決定した場合は、最高管理責任者は、その旨を理由とともに通報者に通知するものとする。この場合、調査委員会は予備調査に係る資料等を保存し、当該事案に係る資金配分機関及び通報者の求めに応じ開示することができる。

(本調査の通知・報告等)

第21条
調査委員会は、予備調査の結果、通報された事案が本格的な調査をすべきものと判断した場合は、前条に規定する報告の日から30日以内に本調査を開始しなければならない。

2 最高管理責任者は、通報者及び被通報者に対して本調査を行うことを通知し、調査への協力を求めるものとする。被通報者が他の研究機関に所属している場合は、当該研究機関に対しても通知する。

3 最高管理責任者は、本調査の実施に際し、調査方針、調査対象及び方法等について、当該事案に係る資金配分機関及び文部科学省に報告・協議しなければならない。

4 最高管理責任者は、委員の氏名や所属を通報者及び被通報者に通知するものとする。これに対し、通報者及び被通報者は、通知された日から10日以内に異議申立てをすることができる。

5 前項の異議申立てがあった場合は、調査委員会が内容を審査し、その内容が妥当であると判断したときは、当該異議申立てに係る委員を交代させるとともに、その旨を通報者及び被通報者に通知するものとする。

(本調査の実施)

第22条
調査委員会は、次の各号により本調査を実施するものとする。

  • 通報された事案に係る研究活動に関する論文、原稿又は発表記録等の精査
  • 実験・観察ノート、生データその他の研究資料等の精査
  • 通報された事案に係る研究費の精査
  • 関係者のヒアリング
  • 再実験の要請
  • その他、本調査の実施に関し調査委員会が必要と認めた事項の調査


2 本調査を行うにあたって、調査委員会は、被通報者の弁明を聴取しなければならない。

3 通報された不正行為が行われた可能性を調査するために、調査委員会が再実験などにより再現性を示すことを被通報者に求める場合、又は被通報者が自らの意思によりそれを申し出て調査委員会がその必要性を認める場合は、それに要すると判断される合理的な期間及び機会(機器、経費等を含む。)の範囲内において、調査委員会の指導・監督の下、実施することができる。

4 調査の対象には、通報された事案に係る研究活動のほか、調査委員会の判断により調査に関連した被通報者の他の研究活動も含めることができる。

5 調査委員会は本調査に当たって、通報された事案に係る研究活動に関して、証拠となるような資料等を保全する措置をとることができる。

6 調査委員会は、通報された事案に係る資金配分機関の求めに応じ、調査の終了前であっても、調査の進捗状況報告及び調査の中間報告を当該資金配分機関に提出するものとする。

7 調査委員会は、調査に支障がある等、正当な事由がある場合を除き、通報された事案に係る資金配分機関の求めがあった場合は、当該事案に係る資料の提出又は閲覧、現地調査に応じるものとする。

8 調査委員会は、調査対象における公表前のデータ、論文等の研究又は技術上秘密とすべき情報が、調査の遂行上必要な範囲外に漏洩することのないよう十分配慮しなければならない。

(被通報者の説明責任)

第23条
調査委員会の調査において、被通報者が通報された事案に係る研究活動に関する疑惑を晴らそうとする場合は、自己の責任において、当該研究活動が科学的に適正な方法と手続に則って行われたこと、論文等もそれに基づいて適切な表現で書かれたものであることを、科学的根拠を示して説明しなければならない。また、通報された事案に係る研究費の使用に関する疑惑を晴らそうとする場合には、当該研究費の使用が適正な方法と手続に則って行われたことを、関係書類を示して説明しなければならない。

2 前項の被通報者の説明において、被通報者が実験・観察ノート、生データその他の研究資料及び会計関係書類等の不存在など、本来存在するべき基本的な要素の不足により、不正行為であるとの疑いを覆すに足る証拠を示すことができない場合は、不正行為があったものとみなす。ただし、被通報者が善良な管理者の注意義務を履行していたにもかかわらず、その責によらない理由により、当該基本的な要素を十分に示すことができなくなった場合等、正当な理由があると認められる場合はこの限りではない。また、実験・観察ノート、生データその他の研究資料及び会計関係書類等の不存在が、当該研究分野の特性に応じた合理的な保存期間や被通報者が所属する研究機関が定める保存期間を超えることによるものである場合も同様とする。

3 調査委員会は、被通報者の説明責任の程度及び本来存在するべき基本的要素について、研究分野の特性等に応じて判断するものとする。

(調査委員会による認定)

第24条
調査委員会は、本調査の開始後150日以内に調査した内容をまとめ、不正行為が行われたか否か、不正行為と認定された場合は、その内容及び悪質性、不正行為に関与した者とその関与の度合い及び研究費の不正使用の相当額、不正行為と認定された研究に係る論文等の各著者の当該論文等及び当該研究における役割を認定する。

2 調査委員会は、前条により被通報者が行う説明を受けるとともに、調査によって得られた物的・科学的証拠、証言、被通報者の自認等の諸証拠を総合的に判断して、不正行為であるとの疑いが覆されないときは、不正行為と認定するものとする。

3 調査委員会は、被通報者の研究体制、データチェックの方法、関係書類等の取扱い等、様々な点から客観的な不正行為の事実及び故意性等を判断するものとし、被通報者の自認のみを唯一の証拠として不正行為と認定することはできない。

4 調査委員会は、調査の過程であっても、不正の事実が一部でも確認された場合には、速やかに認定するものとする。

5 調査委員会は、不正行為が行われなかったと認定される場合であって、調査を通じて通報が悪意に基づくものであることが判明したときは、併せてその旨の認定を行うものとする。この認定を行うに当たっては、通報者に弁明の機会を与えなければならない。

(調査結果の通知及び報告)

第25条
調査委員会は、調査結果(認定を含む。以下同じ。)を直ちに最高管理責任者に報告しなければならない。

2 調査委員会は、前項の報告を行う場合は、第29条から第31条までに規定する最高管理責任者が行う措置等について意見を述べることができる。

3 最高管理責任者は、調査結果を速やかに通報者、被通報者(被通報者以外で不正行為に関与したと認定された者を含む。以下同じ。)に通知するものとする。被通報者が本学以外の機関に所属している場合は、当該所属機関にも通知する。

4 最高管理責任者は、通報を受理した日から210日以内に、当該事案に係る資金配分機関及び文部科学省に最終報告書を提出しなければならない。

5 前2項の場合において、通報がなされる前に取り下げられた論文等に係る調査で不正行為があったと認定されたときは、取り下げ等、被通報者等が自ら行った善後措置や、その措置をとるに至った経緯・事情等を付すものとする。

6 最高管理責任者は、悪意に基づく通報との認定があった場合、通報者の所属機関にも通知する。

(不服申立て)

第26条
不正行為と認定された被通報者は、前条の通知の日から10日以内に、最高管理責任者に不服申立てをすることができる。ただし、その期間内であっても、同一理由による不服申立てを繰り返すことはできない。

2 通報が悪意に基づくと認定された通報者(被通報者の不服申立ての審査の段階で悪意に基づく通報と認定された者を含む。)は、前項に準じて不服申立てをすることができる。

3 不服申立ての審査は調査委員会が行う。ただし、不服申立ての趣旨が新たに専門性を要する判断が必要となるものである場合、又は調査委員会の構成等の公正性に関わるものである場合は、最高管理責任者は、調査委員の交代若しくは追加、又は調査委員会に代えて他の者に審査させることができる。

4 調査委員会は、不服申立ての趣旨、理由等を勘案し、当該事案の再調査を行うか否かを速やかに決定する。当該事案の再調査を行うまでもなく、不服申立てを却下すべきものと決定した場合には、直ちに最高管理責任者に報告し、最高管理責任者は、被通報者に当該決定を通知する。このとき、当該不服申立てが当該事案の引き延ばしや認定に伴う措置の先送りを主な目的とすると調査委員会が判断した場合は、以後の不服申立てを受け付けないことができる。

5 調査委員会は、再調査を行う決定をした場合には、直ちに最高管理責任者に報告し、最高管理責任者は、被通報者に当該決定を通知する。再調査を行うにあたり、調査委員会は、被通報者に前条の調査結果を覆すに足る資料の提出等、当該事案の速やかな解決に向けて必要な協力を求めるものとし、その協力が得られない場合には、再調査を行わず、審査を打ち切ることができる。

6 最高管理責任者は、被通報者から不正行為の認定に係る不服申立てがあったときは、通報者に通知するとともに、当該事案に係る資金配分機関及び文部科学省に報告する。不服申立ての却下及び再調査の開始を決定したときも同様とする。

7 調査委員会は、再調査を開始した場合には、不服申立てを受けた日から50日以内に、前条の調査結果を覆すか否かを決定し、その結果を直ちに最高管理責任者に報告するものとする。最高管理責任者は、当該結果を速やかに通報者、被通報者に通知するとともに、当該事案に係る資金配分機関及び文部科学省に報告しなければならない。

8 最高管理責任者は、悪意に基づく通報と認定された通報者から不服申立てがあったときは、通報者が所属する機関及び被通報者に通知するとともに、当該事案に係る資金配分機関及び文部科学省に報告するものとする。

9 前項による不服申立てがなされた場合には、調査委員会は、不服申立てを受けた日から30日以内に再調査を行い、その結果を直ちに最高管理責任者に報告するものとする。最高管理責任者は、当該結果を速やかに通報者、通報者が所属する機関及び被通報者に通知するとともに、当該事案に係る資金配分機関及び文部科学省に報告しなければならない。

(調査結果の公表)

第27条
最高管理責任者は、不正行為が行われたとの認定があった場合は、速やかに調査結果を公表する。

2 前項により公表する調査結果の内容は、不正行為に関与した者の氏名・所属、不正行為の内容、本学が公表時までに行った措置の内容、調査委員の氏名・所属、調査の方法・手順等とする。ただし、通報がなされる前に取り下げられた論文等において研究活動上の不正行為が行われたと認定された場合は、当該不正行為に係る者の氏名・所属を公表しないことができる。

3 最高管理責任者は、不正行為が行われなかったとの認定があった場合は、原則として調査結果を公表しない。ただし、調査事案が外部に漏洩していた場合及び論文等に故意によるものでない誤りがあった場合は、調査結果を公表することができる。

4 最高管理責任者は、悪意に基づく通報との認定があった場合は、通報者の氏名・所属、悪意に基づく通報と認定した理由を公表するものとする。

(調査期間中における一時的措置)

第28条
最高管理責任者は、本調査の実施を決定したときから調査委員会の調査結果の報告を受けるまでの間、通報された事案に係る研究費の支出を停止することができる。

2 最高管理責任者は、資金配分機関から、被通報者が当該研究費の使用停止を命じられた場合は、その支出を停止するものとする。

(不正行為が行われたと認定された場合の措置)

第29条
最高管理責任者は、不正行為が行われたとの認定があった場合は、不正行為への関与が認定された者及び関与したとまでは認定されないが不正行為が認定された論文等の内容について責任を負う者として認定された著者並びに当該研究費の全額又は一部について使用責任を負う者として認定された者(以下、「被認定者」という。)に対して、直ちに当該研究費の使用中止を命じるものとする。

2 最高管理責任者は、被認定者に対して、不正行為と認定された論文等の取り下げ勧告を行い、被認定者は勧告を受けた後、10日以内に勧告に応ずるか否かの意思表示を最高管理責任者に対して行うものとする。

3 最高管理責任者は、不正行為と認定された論文等の取り下げの勧告に被認定者が応じなかった場合は、その事実を公表する。

4 最高管理責任者は、不正行為が行われたとの認定があった場合は、被認定者の氏名の公表、懲戒処分及び刑事告発等、必要な措置を講ずるものとする。

(不正行為が行われなかったと認定された場合の措置)

第30条
最高管理責任者は、不正行為が行われなかったとの認定があった場合は、本調査に際して措置した研究費の支出停止を解除する。証拠保全の措置については、不服申立てがないまま申立て期間が経過した後、又は、不服申立ての審査結果が確定した後、速やかに解除する。

2 最高管理責任者は、当該事案において不正行為が行われなかった旨を調査関係者に対して周知する。また、当該事案が調査関係者以外に漏洩している場合は、調査関係者以外にも周知する。

3 最高管理責任者は、不正行為が行われなかったと認定されなかった者の名誉を回復する措置及び不利益が生じないための措置を講じる。

4 最高管理責任者は、通報が悪意に基づくものと認定された場合、通報者が本学に所属する者であるときは、懲戒処分、刑事告発等の適切な措置を通報者の氏名・所属、悪意に基づく通報と認定した理由を公表する。通報者が本学以外の機関に属する者であるときは、当該者の属する機関に対し、適切な措置を行うよう求めるものとする。

(不正関与業者への措置)

第31条
最高管理責任者は、不正行為に関与した業者に対して、本学との取引停止、契約解除等の措置を行うものとする。

(研究費及び経費等の返還請求等)

第32条
最高管理責任者は、調査委員会の報告に基づき、次の各号に掲げる研究費及び経費等の返還請求等を行うものとする。
 

  • 最高管理責任者は、被認定者(被認定者の研究グループを含む。以下同じ。)に対し、不正行為が行われたと認定された当該研究費相当額の全部又は一部の返還を求めるものとする。
  • 最高管理責任者は、被認定者に対して、再現性を示すために行った実験等に要した経費の返還を求めることができる。
  • 最高管理責任者は、通報が悪意に基づくものと認定された場合は、実験等の経費を通報者に請求するものとする。
  • 最高管理責任者は、本学から資金配分機関に研究費の返還をした場合において、被認定者から本学への返還額が当該資金配分機関への返還額に満たないときは、その不足分を被認定者に請求するものとする。
  • 最高管理責任者は、本学から資金配分機関に研究費の返還をした場合において、被認定者から本学へ研究費を過分に返還させていた場合は、被認定者にその差額を返還するものとする。

(措置・認定・処分と訴訟との関係)

第33条
最高管理責任者は、認定前後の措置又は認定・処分に対して訴訟が提起された場合、当該措置又は認定・処分が不適切である等、措置の継続又は認定・処分が不適切であると認められる裁判所の判断がない限り、措置又は認定・処分の変更は行わないものとする。

2 最高管理責任者は、認定前後の措置又は認定・処分が不適切であった旨の裁判が確定したときは、直ちに当該措置又は認定・処分を撤回し、必要に応じて次の各号に掲げる措置を行うものとする。

  • 被認定者が私費で本学に返還した研究費がある場合は、被認定者に当該研究費相当額を返還する。
  • 資金配分機関に未使用の研究費の返還をした場合は、当該資金配分機関に当該研究費の再分配を求める。
  • 被認定者が資金配分機関から配分された研究費を私費で負担した場合において、当該研究費相当額の返還について、当該資金配分機関と協議の上、適切な措置を行う。
  • 資金配分機関から打ち切られていた研究費がある場合は、当該研究費の再交付を当該資金配分機関に求める。

(雑則)

第34条
この規程に定めるもののほか、研究活動上の不正行為に関して必要な事項は、最高管理責任者が別に定める。

附 則
この規程は、2015年1月1日から施行する。

附 則
この規程は、2017年4月1日から施行する。