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2024.07.19
学部・学科
    #文化総合学科

今年も磨きました! 文総ちょうこくみがき隊

7月7日(日)に、文化総合学科の学生9名、教員1名、サポートスタッフ1名の計11名で大通公園の彫刻清掃ボランティア活動に参加しました。主催は札幌彫刻美術館友の会で、昨年同様、札幌大通公園ロータリークラブの皆さんと共同での参加です。
7日当日朝は雨が降っており、予定通りの活動ができるか危ぶまれましたが、清掃開始前には雨も上がり、なんとか予定通りの清掃作業ができました。
今回は、10時から12時の約2時間で6体の彫刻作品を清掃しましたが、7月3日(水)に「友の会」の皆さんと事前に勉強会を行い、清掃後に各作品の説明も行いました。
以下、彫刻作品と清掃活動について報告します。

事前勉強会・説明リハーサル風景
事前勉強会・説明リハーサル風景
泉の像.png

泉の像
本郷新によって1959年に制作されたブロンズ製の彫刻です。大通公園のシンボルであるテレビ塔と噴水を背景にした姿が印象的です。本郷新は彫刻家を目指した頃から「彫刻は公共的な広場で、公共的空間の中で生きるものこそ本当の彫刻のあり方である」と考えており、この彫刻によって初めてその考えが実現されたため、この作品は記念すべき作品となっています。
清掃方法は、洗剤とブラシで汚れを落とした後にワックスをかけ磨きます。鳥の糞がつき汚れていたので、ブラシでよく擦り、綺麗に落としました。ワックスをかけるときは、凹凸を意識して出っ張っている部分を磨くとその部分に光沢が出て綺麗に見えるそうです。
また、胸のあたりに丸い跡のようなものがついており、それは制作する際に彫刻を支えるための穴が開いていた跡だということを一緒に作業した方に教えていただきました。今回のように近くから見るからこそ気づけることだと感じました。

石川啄木の歌碑(石川啄木像)
石川啄木像は1981年に札幌在住の文学関係者と札幌観光協会の協力のもとクラーク像も手掛けた彫刻家である坂胆道によって等身大のサイズでつくられた存在感あるブロンズ像です。
黒曜石で作られた土台には啄木が札幌で過ごした間に詠んだ『真として幅廣き街の秋の夜の玉蜀黍の焼くるにほひよ』という詩が刻まれています。札幌の広大な町中でとうきびが焼ける匂い漂う秋の夜に趣を感じた啄木の気持ちが伝わります。
こちらの銅像、実は制作当初の構想は右手にトウモロコシ、左手に詩の本を持たせる予定だったのですが大通公園で販売しているとうきびワゴンの広告と勘違いされないためにこの構想はなくなったそうです。
啄木の着物の皺や頭部分の溝には汚れがたまりやすいので清掃時は小さなブラシを使用して隈なく磨くことを心がけました。全身の汚れを落としてワックスがけを終えた啄木像は清掃前よりも少し表情が明るくなったように感じました。

湖風.png

湖風の像
湖風は、高さ137cmのブロンズ像です。大通公園の中では唯一の青年立像であり、1972年に北洋相互銀行本店が店舗新築と大通の緑化、地下鉄東西線の開通に合わせて「市民の心に将来とも永く残るものを」と願って贈呈されたそうです。その湖風は滋賀県出身の彫刻家、山田良定の作品です。山田は作品について「若者の心に湖のような清らかな息吹を感じて欲しいと同時に、それを今の社会に求めたい、そんな願いから制作した」としています。また、台座に書かれている「湖風」の文字は彼による直筆のものとなっています。
 山田良定は1931年、滋賀県に生まれました。生前は彫刻家としてその名を馳せ、日展の理事として活動するほか、浄土宗専念寺の住職としても活動していました。1975年の「湖風」、1976年の「草原」において、2年連続で日展の特選を受賞しています。彼の作品は、「力強い意志を感じられる、凛々しい像」として今日も愛される作品となっています。

牧童の像
この像は峯孝が制作し、1956年に設置された『牧童』といい、左手にクローバーの花輪を掲げて走る裸の少年と飛び跳ねる子牛の像です。クローバーの花輪を手にした牧童と子牛が仲良く理想に向かって走っている様子が表現されています。
元々は昭和30(1955)年に、北海道をイメージした小さなブロンズの《牧童》として個展に出品されたもので、北海道の酪農関係者が牛乳100万石突破(約20万トン)したことを記念して野外設置用に制作されました。
この像は高さがあるので牧童の頭や子牛の頭、牧童の伸ばした腕やクローバーの花輪を、脚立を使って磨きました。特に花輪の部分の汚れを洗剤で落とすのとワックスを塗るときに大変苦労しました。

牧童.png
開拓母の像.png

開拓母の像
開拓母の像は、佐藤忠良によって制作され、1963年に札幌市に寄贈されました。本体はブロンズで、台座には赤花崗岩を使用しています。しゃがんだ裸の母の膝にのった子どもが熊笹を母の手から受けとっているという、波乱の時代を支えた女性の偉大さが伝わる力強い構図に目を惹かれる彫刻です。母と子が触れ合う手足の隙間や、台座の側面にある詩が彫られたブロンズ板など、汚れの見落としがないようにブラシを使用して、札幌彫刻友の会の方々が隅々まで清掃してくださいました。

花の母子像
花の母子像は、1971年10月に札幌丸井今井デパートが創業100年を迎えたのを記念し、札幌市に寄贈したもので、作者は山内壮夫です。
この像は、母子が手を取りあいながら向き合っており、幼子の手にはライラックの花房が握られています。ライラックは札幌市のシンボルの木です。1960年に札幌市の人口が60万人を突破したことを記念して行われたシンボルを決める市民投票で、ライラックがニセアカシアにわずかな差をつけて選ばれたそうです。
花の母子像は母子の体が三日月のように反っているので、お腹や腰の緩やかな形がはっきり綺麗に見えるよう、水を一度像にかけた後で、洗剤とブラシを使用し、丁寧に汚れを落としました。ワックスがけの際には、母の頭にある花の冠や子が手に持つライラックが立体的に美しく見えるよう、ワックスをダマにならないよう伸ばしながら塗り、ワックスが乾いた後にタオルで艶が出るまで丁寧に磨きました。

花の母子像.png

今年は各彫刻についての解説もちょうこくみがき隊のメンバーが担当して発表したことで、去年よりも彫刻、札幌についてさらによく知ることができました。
札幌彫刻美術館友の会の皆様のおかげで今年も清掃活動に参加させていただき素晴らしい経験ができました。ありがとうございました。

(文責: 藤女子大学 文総ちょうこくみがき隊)