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2023.10.24
学部・学科
    #日本語・日本文学科

第59回藤陽祭 日本語・日本文学会による古本市と研究発表会のご報告

10月14日(土)に開催された藤陽祭において、今年度も本会の学生運営委員が中心となり古本市と研究発表会を行いました。卒業生をはじめ多くの方々にご来場いただきました。ありがとうございました。

古本市
恒例の古本市には学生運営委員のほか一般の学生から参加もあり、前日の準備段階から例年に増して賑やかな様子でした。
当日は今年も学内外から多くの方に足をお運びいただき、550冊ほどの書籍を販売しました。1冊10円から500円のセット販売が最高額の価格設定で、売り上げは12,300円。収益は全額日本赤十字社の災害義援金へ寄付させていただきます。

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研究発表会
研究発表会では、学生運営委員と教員でこの夏北海道立文学館で開催されていた特別展「生誕120年・没後60年 小津安二郎 世界が愛した映像詩人」展を見学したことを踏まえ、「〈小津安二郎の映画〉と文学」をテーマに学生2名と教員による研究発表を行いました。
学生の発表は「小津安二郎と小津映画二作品について」というタイトルの元、小津の代表作である「東京物語」と「秋日和」を取り上げ、老父母への同情一辺倒になりがちな「東京物語」に、親離れ子離れの難しさを描いた「秋日和」をすり合わせる、というものでした。    
「東京物語」でただひとり老父母をいたわった、戦死した次男の嫁である義娘(ヒロイン原節子)の、それぞれの家庭の事情で尾道から東京を訪ねた両親をぞんざいにせざるをえなかった義兄姉の立場に理解を示す台詞から、子供たちの自立ということに焦点を当てた点に、これからまさしくその年齢を生きてゆくことになる学生たちの独自な解釈が見られました。

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また、今年度で退職される関谷博先生のご発表は、退職記念講演を兼ねての発表となりました。
「小早川家の秋」の作品終盤に二度登場する火葬場の煙突シーンを手掛かりに、「小津映画と文学―“純即物的な風景(?)”をめぐって―」と題し、白樺派文学の交友ムードが小津の戦後作品(とくに昭和30年代以降の)の基調をかたちづくりつつも、それに包摂され得ぬ即物的風景があるのではないか、と問題提起する発表でした。その起源を志賀直哉の作品、つまり白樺派の中での彼の表現の異質さに求めようという試みです。
明治期の浪漫主義~自然主義といった政治的な圧力に適合しようとする息苦しさの表現を打ち破ったのが”明るい白樺派”であるという解釈に疑問を呈し、むしろその状況を甘受するスタイルとして洗練化したものが白樺派なのではないかという持論を基底としており、自然主義的あり方に抗った石川啄木に関心を向けておられる関谷先生の目下の研究テーマに結びつくものでもあります。
関谷先生の発表へは多くの卒業生がお越しくださり、発表後は先生との語らいに花が咲きました。

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