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2019.10.14
学部・学科
    #日本語・日本文学科

2019年度 日本語・日本文学科 特別公開講演会を開催しました

   9月6日(金)、今年度の日本語・日本文学科の特殊講義(集中講義)でお招きした慶應義塾大学の小平麻衣子先生による特別公開講演会を開催した。
 小平麻衣子先生のご講演は「それは盗作なのか?―江藤淳・倉橋由美子論争における<女の実感>の問題―」というタイトルで、女性作家が女性作家であるがゆえにこうむってきた(きつつある)問題を解きほぐすにふさわしい内容である。倉橋由美子の「暗い旅」(一九六一年)は、ミシェル・ビュトールの二人称小説「心変わり」(一九五九年)の形式を自覚的に模倣(受容)したものであるが、この作品に関して、男性批評家たちがやっきになって、原作者ビュトールをあがめ、倉橋の志の低さを貶める立場(江藤淳)か、逆に女性ならではの身体感覚が露呈されている、とほめる立場(奥野健男)か、といった揺れ幅の中で取りざたされた。小平氏は、倉橋の使用する「あなた」は女を演じさせられる存在の違和感を引き出すために機能していることを論じ、それ自体が倉橋の戦略であったとしめくくった。女性作家をめぐる論争それ自体をいかに生産的に検証するか、という小平先生のモチヴェーションと最終的に提示された倉橋作品の「新しさ」に聴衆の一人として、大いに触発された。                            (文責 種田和加子)